今回は『House in Chikusa』を例に、住宅のプランをどのように考え、提案していくのかをご紹介します。
この住宅は、すでに敷地が決まっている状態から計画が始まりました。
敷地は都市部の住宅街にあり、周囲には建物が近接しています。
そのような環境の中で、お施主さまからいただいた大きなご要望のひとつが、
「バルコニーで過ごす時間を大切にしたい」ということでした。
キャンプがお好きなご家族で、屋外で食事をしたり、お子さまが遊んだりできる場所を住まいの中につくりたいというご希望です。
光を取り込みながら、外からの視線を遮る
住宅が密集する場所では、開口部を大きくすれば必ずしも快適になるとは限りません。
光を取り入れたい一方で、隣家や道路からの視線も考える必要があります。
そこで今回は、LDKを2階に配置し、その中心に高い壁で囲まれたインナーバルコニーを設けるプランとしました。
周囲からの視線を遮りながら、上部から自然光を取り込むことで、プライバシーと明るさの両立を目指しています。
高い壁で囲われているため、外部からの視線をあまり気にせずバルコニーを利用できます。
実際には、日射を調整するために室内側へバーチカルブラインドも設置しています。
ダイニングとバルコニーを一体にする
インナーバルコニーは、ダイニングと直接つながる位置に配置しました。
開口部には大きく開放できるサッシを採用し、扉を開けることでダイニングとバルコニーがひと続きの空間になります。
バーベキューや外での食事をする際にも、キッチンから食材を運び、調理し、片付けるまでの動線をできるだけ短くできます。
屋外空間を「眺めるための場所」ではなく、日常的に使える生活空間として考えた配置です。
子どもの居場所と家事動線をつなぐ
バルコニーの隣には、子どものプレイルームを配置しました。
キッチンからバルコニーとプレイルームの様子が見えるため、家事をしながら子どもの様子を確認できます。
ダイニングの大開口だけでなく、リビングやプレイルームからも折れ戸を介してバルコニーにつながる構成としています。
それぞれの部屋がインナーバルコニーを囲むことで、どこにいても自然光を感じられ、室内と屋外を行き来しながら子どもが走り回れるような住まいを目指しました。
建築条件も踏まえて開口部を考える
今回インナーバルコニーを採用した理由は、暮らし方だけではありません。
敷地は準防火地域にあり、開口部には防火上の条件も関係します。
計画では、インナーバルコニー外周の壁や開口部の位置関係を整理することで、大きな開口部を実現できる可能性を検討しました。
防火地域・準防火地域では、建物の位置や開口部の条件によって必要となる仕様が異なるため、実際には敷地条件や建築地域の法令を確認しながら個別に検討する必要があります。
道路側へ大きなバルコニーを設ける方法もありますが、道路からの視線や音が気になり、結果としてあまり使われなくなることもあります。
そのため今回は、単純に外へ開くのではなく、建物の内側に外部空間を取り込むことで、使いやすさと開放感の両方をつくることを考えました。
床面積だけでは測れない豊かさ
インナーバルコニーは、1階の個室の上部に配置されています。
そのため、同じ建物のボリュームで考えれば、バルコニー部分を室内にした方が床面積を増やすことはできます。
しかし、住宅の快適さは床面積の数字だけで決まるものではありません。
光が入り、家族が集まり、室内と屋外が自然につながる場所があることで、実際の面積以上の広がりを感じることがあります。
今回の計画では、その価値をお施主さまにも共有していただき、インナーバルコニーのあるプランで設計を進めました。
完成した住宅では、約3m幅の大きく開放できるサッシと折れ戸を介して、LDKとインナーバルコニーがつながっています。
周囲の建物からの視線を抑えながら、光と風を取り込み、家族が日常的に使える外部空間をつくる。
都市部の住宅だからこそ、単純に「窓を大きくする」のではなく、どこから光を入れ、どこへ視線を抜き、どこを閉じるのかを考えることが重要だと考えています。
上の写真が約3mの全開放できるサッシと折れ戸サッシと繋がるインナーバルコニーです。