今回は「House in Kiyosu」の工事を例に、イクスデザインがどのように仕上げ材を選んでいるのか、その一部をご紹介します。
住宅を一軒つくるためには、外壁、床、壁、建具、家具など、数多くの仕上げ材を選定していきます。
中でも特に慎重に扱うのが、天然木などの自然素材です。
工業製品とは異なり、同じ樹種、同じ商品であっても、色や木目、表情は一枚ずつ異なります。図面や小さなサンプルだけでは、完成したときの印象を十分に判断できないこともあります。
House in Kiyosuでは、天井や建具の仕上げに「米杉(レッドシダー)」の羽目板を使用しました。
レッドシダーという素材
レッドシダーは、赤味の強いものから白味のあるものまで、一枚ごとの色幅が大きい木材です。
木目にも、直線的な「柾目」と、山型の表情が現れる「板目」があり、それぞれ印象が異なります。
その色や木目のばらつきも天然木ならではの魅力ですが、広い面積に使用する場合は、どのように組み合わせるかによって空間全体の印象が大きく変わります。
イクスデザインでは、和・洋を問わずさまざまな空間に馴染みやすく、木の質感をしっかり感じられる素材として、住宅でレッドシダーを採用することがあります。
サンプルだけでは決められない素材選び
当初は工務店に材料サンプルを用意していただきました。
しかし、今回の計画でイメージしていた色味や木目と合う材料がなかなか見つからず、複数の仕入れ先へ問い合わせながら、実際の材料を確認していきました。
浜松の木材加工工場へ足を運び、材料の状態を確認したこともあります。
最終的には愛知県内の材木店で、今回の計画に合うレッドシダーを見つけることができました。
発注前にはお施主さまにも材木店へ同行していただき、実物の色や木目をご確認いただいたうえで材料を決定しています。
天然木の「個体差」と向き合う
写真を見ると分かるように、同じレッドシダーでも、一枚ずつ色が異なります。
一枚の板の中に赤味と白味が混在するものもあれば、木目も柾目と板目で大きく表情が変わります。
今回の空間では、直線的な木目が美しく見える柾目を中心に使いたいと考えていました。
これは単なる好みではなく、設計段階でお施主さまにお見せしていた過去の実例や、CGなどで共有していた完成イメージとの整合性を保つためでもあります。
提案時と完成時の印象が大きく変わらないようにすることも、材料選びでは大切だと考えています。
参考としてお見せしていた「House in Okayama」でも、LDKと玄関まわりでレッドシダーの色味を調整しながら使用しています。
現場に届いてから、さらに選別する
材料を発注すれば、それで素材選びが終わるわけではありません。
天然木の場合、実際に届いた材料の中にも色や木目の差があります。
House in Kiyosuでは、現場に搬入されたレッドシダーを一枚ずつ確認し、色味や木目ごとに選別しました。
色の近いものをまとめ、貼る場所ごとに振り分けていきます。
隣り合う面で色が急に変わらないようにしたり、建具の場合には扉の表と裏の見え方まで考えながら組み合わせを決めました。
材料そのものを変えるのではなく、天然木が持つ個体差を理解したうえで、最も美しく見える使い方を考えていきます。
素材選びは、材料を決めるだけではない
施工直後の仕上がりを見たとき、時間をかけて材料を選び、一枚ずつ振り分けたことの意味を改めて感じました。
お施主さまにも喜んでいただくことができました。
完成した空間だけを見ると、ごく自然に木が並んでいるように見えるかもしれません。
しかし、その自然な仕上がりの裏側には、材料を探し、確認し、選別し、施工するという多くの工程があります。
こうした細かな検討に付き合ってくださった現場監督や大工さんにも、本当に感謝しています。
素材選びは、カタログから商品番号を選ぶだけではありません。
素材そのものの特徴を理解し、実物を確認し、その空間にどう使えば最も良く見えるかを考えることまで含めて、設計の仕事だと考えています。
一つひとつは小さな手間ですが、その積み重ねが空間全体の質につながるよう、丁寧に取り組んでいます。