今回は愛知県清須市で設計させて頂いたよこい歯科クリニックの計画案についてご紹介させていただきます。
計画地は、信号のない交差点に面した角地です。
お施主さまとご要望や医院のあり方について話を重ねる中で、イクスデザインが考えたのは、大きな看板を設置するのではなく、「建物そのものを看板にする」という方法でした。
大きな看板ではなく、建物そのものをサインにする
ロードサイドの医院では、交差点側に駐車場を設け、道路から見えやすい位置に大きな看板を立て、その奥に建物を配置する計画も多く見られます。
よこい歯科クリニックでは、その考え方を少し変えました。
交差点側に建物を配置し、華美な装飾や大きな看板に頼るのではなく、白いシンプルな外壁に、大小さまざまな正方形の窓を配置することで、建物自体に特徴を持たせています。
一見ランダムに見える窓の配置によって、シンプルな箱型の建物に独自の表情が生まれます。
特徴的な外観そのものが通行する人の目に自然と留まり、「あの白い建物が歯科医院」という認識につながることを考えました。
建物の配置から、駐車場への入りやすさを考える
敷地に面する2本の道路には、それぞれ異なる特徴がありました。
メイン道路の向かい側にはスーパーマーケットがあり交通量が多い一方、もう一方の道路は比較的交通量が少ない環境でした。
そこで、建物を交差点側へ配置し、駐車場への出入口は交通量の少ない道路側に設けています。
医院では、子どもから高齢者まで幅広い方が車で来院します。
そのため、道路からの視認性だけを優先するのではなく、車が安全に入りやすく、駐車しやすく、退出しやすいことも大切な設計条件として考えました。
夜には交差点からランダムな光の建物が良い違和感で目立っています。
昼と夜で表情が変わる窓
昼間は、白い外壁に大小の正方形の窓が並ぶシンプルな外観です。
一方、夜になると室内の光がそれぞれの窓から漏れ、建物の表情が大きく変わります。
道路から見ると、大小の光が不規則に浮かび上がり、昼間とは異なる存在感をつくります。
照明で建物全体を派手に演出するのではなく、医院の中で必要な光が、そのまま外観のサインになることを意図しました。
ランダムに見える窓には、それぞれ役割がある
外から見ると無作為に配置されているように見える窓ですが、実際には単なる装飾ではありません。
建物内部では、診療チェアや待合室など、それぞれの場所から外部が程よく見える位置に窓を設けています。
診療室では、患者さんがチェアに座ったときに外の景色や空を感じられるようにすることで、閉塞感を和らげることを考えました。
つまり、この窓には、
室内に光を取り入れる
外とのつながりをつくる
患者さんの閉塞感を軽減する
外観に特徴を与える
という複数の役割があります。
待合室にも光と外とのつながりを
待合室は吹き抜けとし、高い位置にも窓を設けています。
患者さんが診療を待つ場所だからこそ、閉じた空間にするのではなく、自然光を取り入れながら、外部の気配を感じられる空間を目指しました。
時間帯によって室内へ入る光も変化し、それが待合室の表情にもつながっていま
「窓」という機能に、もう一つの意味を与える
窓は本来、光や風を取り入れ、外を見るための建築要素です。
よこい歯科クリニックでは、その基本的な機能を保ちながら、配置や大きさをデザインすることで、建物を印象づけるサインとしての役割も持たせました。
大きな看板という新しい要素を加えるのではなく、もともと建築に必要な「窓」を使って医院の個性をつくる。
窓という機能を、建物のサインにする。
機能にもう一つの意味を与えることも、デザインの役割だと考えています。
こうした設計によって、よこい歯科クリニックは完成後、海外の建築・デザインメディアにも取り上げていただきました。