大野歯科医院 / Plan Study
歯科医院の計画では、診療室や待合室の配置だけでなく、駐車場の台数、道路からの入り方、建物の見え方、周辺環境など、敷地全体を見ながらプランを考える必要があります。
今回は、名古屋市昭和区で設計した大野歯科医院を例に、敷地条件からどのように建物の形と間取りを導いていったのかをご紹介します。
計画地は交差点から少し入った位置にあり、隣にはスーパーマーケットが建っていました。
必要な駐車台数と敷地形状を考えると、道路側に駐車場を確保し、建物を敷地の奥に配置する構成が適していました。
ただし、そのまま建物を配置すると、交差点方向から医院を見たときに、隣接する建物によって医院の存在が分かりにくくなります。
お施主さまからも、この点を何とかできないかというご相談がありました。
そこで、単に看板を大きくするのではなく、敷地への建物の置き方そのものから解決することを考えました。
交差点から見えるよう、待合室の向きを変える
計画では、吹き抜けとなる待合室部分のボリュームを、道路に対して斜めに配置しました。
建物の一部を交差点方向へ向けることで、敷地の奥に建物があっても、外壁面と医院のサインが視界に入りやすくなります。
ここで大切にしたのは、目立たせるためだけに建物の形を変えないことです。
外観だけを考えて壁を斜めにすると、内部に使いにくい余白やデッドスペースが生まれる可能性があります。
そこで、その形によって生まれる空間を、内部のプランにも積極的に取り込むことにしました。
斜めの壁から生まれた余白を「中庭」にする
お施主さまからは、待合室にテレビは必要ないというご希望がありました。
そこで、テレビを見ながら待つ場所ではなく、中庭や自然光を感じながら過ごす待合室を考えました。
斜めに配置した待合室と建物本体との間に生まれる余白を中庭とすることで、外観上必要だった建物形状が、内部空間の魅力にもつながります。
敷地条件を解決するために生まれた形を、そのまま内部のデザインへつなげていく。
今回の計画では、この考え方がプラン全体の軸になっています。
待合室と受付の関係も、建物形状から考える
待合室を斜めに配置したことで、受付との位置関係にも変化が生まれました。
受付から待合室全体の様子を自然に把握しやすい配置とし、患者さんと常に正面から向き合わなくても、待合スペースの状況を確認できるようにしています。
医院のプランでは、それぞれの部屋を単独で配置するのではなく、患者さんが過ごす場所と、スタッフが働く場所の関係をどうつくるかも重要になります。
中庭、待合室、受付を一体として考えることで、それぞれが無理なくつながる構成を目指しました。
木製サッシが内部と外観をつなぐ
吹き抜けとなる待合室には、大きな木製サッシを設けています。
内部から見ると、木の質感が白を基調とした待合室に柔らかな印象を与え、中庭とのつながりをつくります。
外観のための要素、室内のための要素と別々に考えるのではなく、一つのデザインに複数の役割を持たせることで、建物全体に一貫性が生まれると考えています。
中庭を、スタッフの仕事環境にもつなげる
中庭は待合室だけのためのものではありません。
技工室からも中庭が見えるように窓を設け、作業をしながら外部の緑や自然光を感じられる計画としました。
医院では、患者さんが過ごす場所だけでなく、スタッフが長い時間を過ごす仕事環境も同じ建物の中にあります。
今回の中庭は、『待合室のための庭』であると同時に、『スタッフの仕事環境にも関わる庭』として計画されています。
一つの空間を複数の場所から共有することで、限られた敷地をできるだけ有効に使うことも意識しました。
敷地の問題を、プランの特徴へ変える
完成した建物を見ると、斜めに配置された待合室のボリュームが、医院の外観を特徴づけています。
道路の正面からだけを見ると建物は敷地の奥にありますが、交差点方向からは斜めの外壁面が視界に入り、医院の存在を確認できます。
今回の計画は、
「隣接する建物によって交差点から医院が見えにくい」という敷地の問題から始まりました。
その問題に対して、看板だけで対応するのではなく、待合室の向きを変える。
その形から生まれた余白を中庭にする。
中庭を待合室だけでなく、受付や技工室にもつなげる。
そして、木製サッシなどの素材を内部と外観の両方に生かす。
このように一つの条件から考え始めたことが、最終的には建物全体のプランへとつながっています。
敷地の制約を避けるのではなく、その条件を読み取り、そこからその建物ならではの空間をつくる。
それも、設計の大切な役割だと考えています。